アメリカの生んだ大人気作曲家フォスター(S.C. Foster, 1826-1864)の歌をお届けしましょう。彼は作曲だけでなく、作詞も基本的には自分でしました。ここにあげた「おー、スザンナ」は1848年、フォスター21歳のときの作品で、発表後1年もたたないうちに全米を席巻(せっけん)する大ヒット曲になりました。まず、歌詞の本当の意味を見ていただきましょう。
おー、スザンナ(訳:三宅忠明)
ぼくはアラバマからやって来た、
バンジョー膝に乗せて。
ぼくはルイジアナに行く、
本当の恋人に会うために。
出発した日は一晩中雨だったから、
天候はからからに干上がっていた。
お日様がとても暑くて、凍え死にそうだったよ。
スザンナ、泣かないでくれ。
繰り返し
おー、スザンナ、泣かないでくれ。
ぼくはアラバマからやって来た、
バンジョー膝に乗せて。
この前の晩夢を見た。
なにもかも静まりかえっていた。
するとスザンナの姿が見えた、
丘を駆け下りて来るのが。
口にソバ粉のパンを頬張り、
目には涙をためて。
ぼくは言う、南部からやって来たのだと。
スザンナ、泣かないでくれ。
繰り返し
もうすぐ着くよ、ニューオーリーンズへ。
そしてあちこち探すんだ。
もしもスザンナの姿が見えたら、
ぼくは地面に倒れ伏す。
そしてもしその姿が見えなかったら、
間違いなくこの黒いぼくは死ぬ。
もしぼくが死んで埋葬されても、
スザンナ、泣かないでくれ。
繰り返し
「出発した日は一晩中雨だったから、天候はからからに干上がっていた」だとか、「お日様がとても暑くて、凍え死ぬところだった」などというと、ずいぶん理屈に合わないと思うひとも多いでしょう。しかし、これが英語圏のユーモアの一部であるナンセンスの面白さなのです。このように考えながらこの歌詞を味わってください。3番のthis darkey を「黒いぼく」と訳しましたが、フォスターはアフリカ系住民(黒人)になりきって多くの歌を書きました。しかし、彼自身は生粋のアイルランド系移民の子孫で、アメリカでの生活の基盤も北部でした。南部にも一度しか足を踏み入れたことがないそうすし、まして、スワニー川(「故郷の人々」に出てきます)が実在するフロリダ州には一度も行ったことがありませんでした。