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まず、明治21(1888)年に唱歌(昭和16(1941)年から音楽と呼ばれるようになりました)の教科書に載った大和田建樹の歌詞から見ていただきましょう。
故郷の空(作詞:大和田建樹)1888
夕空晴れて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫鳴く
思えば遠し 故郷の空
ああ、わが父母いかにおわす。
澄みゆく水に 秋萩垂れ
玉なす露は すすきに満つ
思えば似たり 故郷の野辺
ああ、わが兄弟誰と遊ぶ。
私は、昭和24(1949)年、小学5年の音楽の授業で歌いました。スコットランド民謡となっていましたから、しばらくの間、鈴虫も秋萩もスコットランドの風物だとばかり思っていました。実は、スコットランドの国民詩人といわれるロバート・バーンズの有名な詩にかの地で古くから伝わるメロディーをつけたものでした。内容は、「故郷の空」とは何の関わりもありません。「誰かさんと誰かさんが麦畑」が近いです。ライ麦畑で、若い男女が入り乱れて、さしづめ今でいう合コンをやっている、ずいぶん変わったというか、なんとも愉快な歌ですね。スコットランド方言がいくつかありますので、少し説明しておきましょう。はじめから、gin=given=if, lassie=girl, laddie=boy, nane=none, ha’e=have, a’=all, frae=from, swain=shepherd boy, hame=home, na=not, などと直して歌うこともありますが、ここではあえて原文のままにしました。発音についても、town は「タウン」より「トゥーン」、これと韻を踏む frown も「フラウン」より「フルゥーン」に近い音になります。
最後に、原詩に近い訳を載せておきましょう。
ライ麦畑をやって来て(訳:三宅忠明)
だれかがだれかに、ライ麦畑で、
キスをしている、いいじゃないの。
繰り返し
私にゃお相手いないけれど、
そのうち出来るよ、
ライ麦畑で。
町からいい男やって来て、
ナンパしている、いいじゃないの。
とうとう見つけた、ヒツジカイ、
名前や住まいはどこなんだろう。
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